チンクエチェントの空調の下にあるASRオフスイッチ。普段触ることは無いと思います。
ASRはアンチスリップレギュレーションの略です。ESC(横滑り制御装置)の一部で、車を安全に走らせる機能の一つです。
このASRは、雪道など滑りやすい路面で駆動の片側タイヤがスリップした事でデフギアが働き反対側のタイヤの駆動力がなくなり進めなくなった時に、スリップしたタイヤ(片輪)にブレーキをかけ反対側のタイヤの駆動を助けます。
また、双方のタイヤがスリップするなど過度にアクセルが踏まれている場合にはエンジン出力も制御します。
ASRが作動するとメーターパネルのESCのランプが点滅し運転手に知らせます。
雪中の道路ではスタッドレスタイヤでも走れますが、傾斜地、段差、アイスバーンで一度停止してしまったなど悪条件では4WDやリミテッドスリップデフ(LSD)がついている車のように脱出することができます。(過信は禁物)
▼雪道での走行テスト(スタッドレスタイヤ装着)
▼ASRオフでは脱出できなかった(志賀高原スキー場)
普段触ることがないASRスイッチですが、タイヤチェーンを装着した時には不用な作動を防ぐために手動でOFFにした方がよい場合があります。また、車検時の車速メーター検査では駆動輪だけ回転させる必要があり、この時に車両はスリップを検知しスロットルを抑えてしてしまい測定ができなくなってしまうため手動でOFFにする必要があります。
▼パンダ2(169)にも年式やグレードによって装備されている
アバルトではASRの他、エンジン出力を落とす機能がないTTC(トルクトランスファーコントロール)が備わっていています。サーキット走行などでは有効ですが、ブレーキを走るためにも使うためパッドやローターなどが早く痛むようです。
ESCは、ダッシュボード下のフロアにヨー(傾き)センサーがあり機能させます。オーバーステアやアンダーステアなどハンドルを切った回転角に対し車の速度によってスリップ等が起きて曲がらなかったり曲がりすぎてしまう事をエンジンの出力落としたりブレーキを使って制御します。峠道などで予想外にカーブがきつくスリップし始めた時などに効果が発揮されます。あくまでも早く走るための機能ではなく安全に走るための機能です。
以下フィアット500取扱説明書4章 安全装備からの引用(一部)です。
この車はアクティブセーフティーシステムとして以下の装備(機能)を備えています。
このシステムはブレーキを個々の制御やエンジン出力を抑える事で機能させています。
- ABS(アンチロック ブレーキシステム)
- EBD
- MSR(モーターシュレップ モーメントレグルング)
- ESC(エレクトニック スタビリティコントロール:電子制御式横滑り抑制装置)
- ASR(アンチ スリップ レギュレーション)
- HBA(ハイドローリック ブレーキアシスト)
- HHS(ヒルホールドシステム:坂道発進補助機能)
ー注意ー
- このシステムは安全性能や走行中の安定性を高めるものでは無く、路面グリップ(接地力)の低下によるスキッド(横滑り)や駆動スリップを抑制したり、走行安定性を損なわないように補助しますが、その効果は路面状状況などに応じて限定的です。ドライバーは周囲の交通量や天候、路面状況などに応じた安全な速度で走行し、車の走行安定性や乗員の安全を確保する羲務があることを忘れないでください。
- 駆動力や制動力、ハンドル操作性はタイヤと路面とのグリツプに依存します。ESCやABS、ASRなどはタイヤの路面グリップを向上するものではなく、一時的に失った路面グリップを回復させようとするシステムです。たとえば、雪道や凍結路、アクアプレーニング現象発生時意ど路面の摩擦係数が大きく低下している状況ではESC非装備車と同じようにスキッドやスリップが起こり、ESCやABS、ASRなどが適切に作動しても車のコントロールを失うことがあります。
- アクティブセーフティーシステムを過信した無責任な運転や、それらの能力を試すようなことは自分だけでなく他車の安全を損ない、事故の原因になります。このような危険行為はしないでください。
ABS
走行中にブレーキをかけたときの制動力はタイヤがロックする寸前の状態が最も高く、ロックすると制動力は大きく低下します。ロックして路面をスリップするタイヤは路面グリップ(接地力)を失い、前輪ではハンドル操作ができなくなります。
ABS(アンチロックブレーキングシステム)は通常のブレーキシステムに電子制御式のブレーキ液圧調整機構を組み込んだ付加装置であり、ブレーキペダル操作の制動時にタイヤのロックを最小限に制御し、制動力を維持する結果としてハンドル操作能力を失わないように補助するシステムです。
ABSの作動:
ブレーキペダルを踏んだときにABSが作動すると、ブレーキペダルがわずかに振動してABSが作動したことを知らせます。そのままできる限リ強くブレーキペダルを踏み続けてください。
作動説明:
ABSが作動すると、各タイヤがロックする寸前の回転速度を保つようにブレーキ液圧力を最適に制御し、その作動は1秒間に数十回のポンピングブレーキをかけたことと同じになります。EBD:
EBD(電子制御式制動力配分機能)はABS機能のひとつとしてESCと連携し、ブレーキペダルを踏み込んだときの前輪と後輪ヘの制動力配分を最適にコントロールします。その結果、急ブレーキのときでも後輪の早期ロックを回避し、制動時の走行安定性を高めるように補助します。
MSR
MSR(モーターシュレップ モーメント レグルング=エンジンブレーキコントロール)は、エンジンブレーキによる制動力をコントロールします。
滑りやすい路面などで、アクセルペダルを急に戻したときや、急激なシフトダウン操作によリタイヤのグリップ(接地力)に対してエンジンブレーキが強すぎるときに、MSRが自動的に作動します。この結果、ほどよいエンジンブレーキを作用させて駆動輪の制動時ロックを防ぎます。
ESC
概要:
ESC(エレクトロニック スタビリティ コントロール:電子制御式横滑り抑制装置)は、滑りやすい路面などでタイヤがグリップ(接地力)を失ったときに、自動的に個別のタイヤにブレーキをかけたり、エンジン出力を低くすることで路面グリップを回復させ、走行安定性を補助するシステムです。
たとえば、ドライバーの意志(ハンドルの回転角度)に反して車が曲がり過ぎたり(オーバーステア)、曲がらなかったり(アンダーステア)したとき、ドライバーの意志に沿うように車の進路を修正しようとします。
走行中の車は各タイヤの路面グリップが良好な状況ならば、ドライバーの意志に沿ってハンドルやアクセルペダルの操作に応じ、前後、左右方向ヘ自由にコントロールできます。しかし、路面グリップが最低限度以下になったり、駆動力が路面グリップを超えると、タイヤが空転したり、スキッド(横滑り)が起きてハンドル操作が効かなくなり、車はドライバーの意志(進路)に反して道路(車道)から外れてしまいます。
タイヤが路面グリップを失い、スキッド(横滑り)やスリップ(駆動時/制動時の空転)が起きると、各センサーが感知してESCが作動し、スキッドやスリップを抑制するようにします。
ESCの作動:
エンジンを始動すると、常にESCがON(スタンバイ状態)になります。また、走行中にESCが作動するとメーターパネルの表示灯、またはESCが点滅します。
作動説明:
カーブを曲がるときを例にすると、ハンドルの回転角度や、車の加速度、車の回転角度とその速さ、個別の車輪回転速度などの信号を各センサーからESCユニットが受け取ります。
この結果、ドライバーがハンドルを回してカーブを曲がろうとしている状況を算出します。
カーブを走行中、ESCユニツトは車の状態(実際に走行しているカーブの曲率)とドライバーが望んでいる曲率を常に比較します。これら2つの曲率に「不一致」が生じて本来の進路(車線)から外れると、すぐにドライバーが望んでいる進路に復帰するよう最適な制御を実行します。
たとえば、アンダーステアが生じて車が本来の進路(車線)から外側ヘ外れそうになった(外れた)とき、内輪側の前輪、または前後輪に適切な制動力を発生させて車をカーブの内側に向けるようにし、必要があれぱ同時にエンジン出力を下げて補助します。これらの制御は、進路(車線)から外
れた状態が回復して「不一致」が解消するまで、状況の変化に応じながらも絶え間なく続きます。ESCは、とりわけ路面グリツプが刻々と変化するような状況で効果を期待できますが、決して安全性を高めるシステムではありません。
ASR
ASR(アンチスリップレギュレーション:駆動制御機能)は、駆動輪に駆動スリップ(空転)が起きたとき、この現象を抑制するよう補助する機能です。滑りやすい路面でグリップ(接地力)が低いときでも、より安定し路面グリップでの駆動力を期待できます。
ABSセンサーを利用して駆動スリップを検知し、ESCユニットがエンジン出力を抑制したり、自動ブレーキをかけることで路面グリップを回復させるように作動します。
両輪での駆動スリップ発生時:
空転が解消するまで、エンジン出力をー時的に低くします。
片輪での駆動スリップ発生時:
駆動輪に自動ブレーキをかけることで、ブレーキ作用リミテッドスリップデファレンシャル(BLD)のように空転を解消させます。
ASRは以下のようなときに自動的に作動し、駆動スリップを抑制して安定した駆動力を確保するように補助します。
◆路面グリップに対して駆動力が大き過ぎるとき
◆雪道や凍結路面、悪路などの滑りやすい路面での加速時
走行中にASRが作動するとメーターパネルのESC表示灯、またはESCが点滅します。
ASR-OFFスイッチ:
ASR-OFFスイッチを押すと、ASRがOFFになリ、スイッチ自体の表示灯が点灯します。
自動ON:
エンジン始動後は常にONになリ、走行中は必要に応じて自動的に作動します。
手動OFF:
ASRをOFFにして作動しないようにできます。OFFにすると、マルチファンクションディスプレイに。”ASR disconnect”(ASRがOFF)が表示されます。
手動ON:
スイッチ操作でASRをONにすると、マルチファンクションディスプレイに”ASR connected(ASRがON)が表示されます。
HBA
HBA(ハイドローリック ブレーキ アシスト)は万一、急ブレーキをかけたとき、ブレーキペダルを踏み込む力(踏力)が足リないときでも、通常よリ高い制動力を発揮するように補助する機能です。
ブレーキペダルを踏み込む力が足りなくても踏み込む速度が速く、そのまま踏み続けたときは、「急ブレーキ操作」と判断してHBAが作動しますがブレーキペダルを踏み続ける操作は変わリません。素早く、確実に踏み続けてください。
踏み込んでいたブレーキペダルを戻すと、HBAの作動はOFFになります。
ヒルホールドシステム
ヒルホールドシステム(坂道発進補助機能)は、ESCに組み込まれている機能のひとつです。上リ坂で発進するときにハンドブレーキを併用しなくても車が不意に下がるのを防ぐように補助します。
エンジンが回転中で上リ坂での停車時に、1速、または”R”(リバース)にシフトしてブレーキペダルとクラッチペダル<MT車>を踏み込んだあとに、ブレーキペダルから足を離すと自動的に作動します。
作動説明:
上り坂での停車後、坂道発進に必要な駆動力をエンジンが発生するまでの短時間(ブレーキペダルから足を離し、アクセルペダルを踏み込むまでの最長約2秒間)、ESCの制御により自動的にアレーキを作動させ、坂道で車が下がらないように補助します。坂道発進時にブレーキペダルから足を離し、約2秒以内にアクセルペダルを踏み込まないときは、ヒルホールドシステムがOFFになリ、自動ブレーキ作動も解除されます。また、システムが坂道発進を補助したときも、自動ブレーキ作動は約2秒後に解除されます。
故障表示:
ヒルホールドシステムに異常が起きると、シンボル、またはESCと警告メッセージ(ヒルホールドシステム:異常)が表示されます。
通常の走行には影響あリませんが、すみやかにフィアット正規ディーラーで点検を受けてください。
急な上り坂での発進方法<MT車>
急勾配の坂道を発進するときは、以下の方法を参考にしてください。1.停車後にブレーキペダルを充分に踏み込むと、ヒルホールドシステムが作動を開始します。
2.発進に備えクラッチペダルが止まるまで踏み込み、1速、または”R”(リバース)にシフトします。
3.クラッチペダルを踏み続けながらブレーキベダルから足を離し、アクセルペダルを踏み込みます。このときヒルホールドシステムの作動により、車は止まっています(最長約2秒間)。
4.エンジン回転数が充分に上がったら車が動き出すまでクラッチペダルを徐々に放します。
上記の操作により不安なく安全に発進ができれば、「ハンドブレーキを併用した坂道発進」は必要はあリません。
(WEB担当スタッフ)