フィアット500e使用レポート

納車から5ヶ月が経ち、フィアット500eの走行距離が2000キロを超えました。これまでの乗り心地や使用感について、私が実際に感じたことを共有したいと思います。

1.はじめに
フィアット500eは、イタリアの自動車メーカーであるフィアットが製造する電気自動車です。オリジナルのフィアット500をベースに設計され、環境にやさしい電気モーターを搭載しています。 フィアット500eの特徴は、その環境性能と5ナンバーの電気自動車は数少ないコンパクトなボディにあります。電気モーターを搭載することにより、ガソリン車と比較して大幅に環境にやさしい性能を発揮しています。また、コンパクトなボディにもかかわらず、室内空間を広くとっており、街乗りに最適な車種です。 以降、一般的に記事化されている事項は除いて私が乗ってきて感じたことメリットデメリット等を書いていきたいと思います。

 

2.デザイン
500のデザインを継承している新型のデザインはとても良いと思います。バッテリーをフロア下に配置したため、フロアが10センチほど上がっているようで腰高なイメージです。アンテナがなくなったのは立体駐車場を利用する人にとっては歓迎すべき変更です。ただ、リアスポイラーは大きめなのでアバルトチックな感じがします。もう少し小さくても良かったと思います。「ICON」「OPEN」のフロントバンパーに飾られた「500」のロゴエンブレムはレーダーが内蔵されているためフラットな形状になっているのは仕方がないとしてもチープさが感じられます。「POP」の「500」のロゴエンブレムの方が立体的で豪華であるように思います。17インチのアルミホイールは、黒い色が施されているため、ブレーキダストの汚れが目立ちにくく、デザインもカッコいいです。ただし、スポークが多く洗車が大変なのが難点です。

▼下がレーダー付きのロゴエンブレム

 

3.内装
大型モニターを中心に水平の直線的で鮮烈で高級感のあるデザインは好感を持てます。スピードメーターが表示されるモニターは画面切り替えにより今まで以上の情報が表示されます。モニターの下にはスマートフォントレイがあります。スマートフォントレイにはワイヤレス充電が備わっているのでスマートキーを置くことができません。スマートフォンを置いたときに原因はわかりませんがスマートフォンが高温になっていたことがありました。置き方によっては充電されなかったりスマートフォンのNFCが反応してウォレットアプリが立ち上がったりすることがあります。ワイヤレス充電のON-OFF機能が欲しいところです。
ヒーターが大きくなったようで足元が狭くなりました。右ハンドル車では左足のフットレストが極端に狭くなりました。また助手席の窓上にあるアシストグリップが無くなりました。これは快適なドライブをするにはマイナス要素になります。

▼狭くなったフットレスト

ドアロックはイグニッションボタンで電源を切らないとロックしません。そしてドアロックは機械音がしないためロックしたのかを室内のロックランプかウィンカーの点滅を目で確認しないとわかりません。ロック・アンロック音を設定ですることできますがクラクションを使用しているため大音量です。慣れるまで電源オフをし忘れそのままロック操作をしてしまい戻ってきたらロックされずに電源が入ったままの時が何度かありました。

 

4.センターモニター
センターモニターには、オーディオやナビに加えて、スマートフォンとの連携、エアコン、電力、充電など今までよりも多くの表示項目があります。また、好みに合わせて設定も変更できます。しかし、表示されるメニューボタンが左側に配置されているため、遠く手を伸ばさないと届かず使いにくいという問題があります。これは改善してもらいたいです。

▼左側に並んでいるメニューボタン

ナビゲーションには、AISINのソフトが装備されていますが、文字入力の操作があまりにも使いづらいです。入力窓がキーボードに隠れてしまったり、カタカナのキーボードが無く ひらがなからからの変換が思うようにできなかったりと、「ドッコオートテクニカ」を入力することも超困難だったため諦めました。航続可能エリアを表示されますが現在地を中心に日本地図に円が表示されるだけです。(日本地図を表示するなら北は上でしょう)しかもこの地図からナビ操作に戻っても、縮尺が日本地図のままなのでスケールボタンを何度も押さないと案内には使えません。電気自動車のナビなので電費を考慮したルート案内で残りの電力量を表示してもらいたいです。このため私はもうこのナビを操作することを諦め地図表示にしか使わないことにしました。ナビの件はFIATのお問い合わせのCHAO FIATに要望を出しました。改善してくれることを期待します。

▼航続可能エリア表示

日本仕様では設定できませんが、外気温に応じてシートヒーターを自動的にONにできるようで寒い時期は毎回シートヒーターのスイッチをONにするのが面倒なのでこの機能が欲しいです。
私はiPhoneを使用しているため、CarPlayでGoogleMapを使用していましたが、相性が悪いのか、動作が重く表示がカクカクしていたりなかなか表示されなかったり音声だけが遅れたりして使い勝手が悪いです。その点、AndroidスマートフォンでGoogleMapを使用するとスムーズに動作します。Yahoo!マップやiOSのマップは、それほど気になりません。現在では500e専用のAndroidスマートフォンを用意してセンターモニターで案内してもらうようにしました。

 

5.安全装備
フィアット500eには、豊富な安全装備が搭載されています。衝突被害軽減ブレーキでは車間距離が短い時に前方の車が急減速や路地から飛び出してきた自転車などに対しては、自分がブレーキを踏んだと同時ぐらいの時間で追突警告が大音響で知らせてきます。この音に驚かされます。
360°パーキングセンサーは、駐車だけでなく常に360度監視しており、走行中にも壁や電柱に寄せても接近距離が表示されます。

▼360°パーキングセンサー

 

6.加速性能
フィアット500eは非常に優れた加速性能を持っています。モーターの最高出力は43kW(118 hp)で、アクセルを踏むだけで最大のトルクを発生させることができます。そのため、アバルトに引けを取らないほどの加速力を発揮します。このトルク力により、街中でもスムーズに走行することができます。また、合流などで今までのようについアクセルを強く踏み込んでしまうと急加速に驚きます。

 

7.走行モード
フィアット500eは走行モードが3種類あり、通常の内燃機関のオートマチック車のような走行を想定した「NORMAL」モード。走行可能距離を長くすることを目的としている「RANGE」モード。いくつかの制限をかけて最大の効率と最大の走行距離を目的とした「SHERPA」モードもあります。「NORMAL」モードは坂道発信などで有効な停車時のクリープは、モーターなのでトルクがあり、ゆっくりだけど力強く一般的なオートマチックより少し強い気がします。それ以外は内燃機関の自動車と遜色ない走りなので最初はこのモードを使うことでしょう。
「RANGE」モードは電気自動車の特有のワンペダル走行があり完全停止までワンペダルで行えます。停止するタイミングはすぐに慣れますが、完全停止は最後にブレーキをキュッとかけるため少し「カックン」という感覚があります。アクセルペダルを離す勢いで回生ブレーキの強さが変わる気がします。アクセルペダルを軽く離しただけでも前につんのめる感じかがあり同乗者は乗り心地が良いとは思えません。アクセルペダルの踏み直しでもブレーキがかかってしまうためブレーキ操作の少ない高速道路などでは「NORMAL」モードを使用した方が良いと思います。「RANGE」モードに慣れすぎると、急ブレーキをかける必要があった場合に自分がブレーキを踏むことができるか心配です。「RANGE」モードでオートクルーズ中にオートクルーズをキャンセルすると、アクセルペダルを踏んでいないので急ブレーキがかかってしまうことがあるため予め軽くアクセルを踏んでおくか「NORMAL」モードに変更しておいたほうが良いでしょう。このように楽といえば楽ですが、ため「NORMAL」モードよりも緊張感があります。モード切り替えは操作しやすいところにありいつでもすぐに切り替えができます。

▼モード切り替え

「SHERPA」モードに切り替えると航続可能距離が増えます。ほぼ使っていないため使用感はありません。

 

8.エアコン
エアコンの操作パネルは従来の物理ボタンに加えディスプレイからも操作できます。

▼エアコンコントロール

最近の電気自動車は冷暖房兼用のヒートポンプ式のエアコンが主流になりつつありますが、500eの暖房はPTCヒーター、冷房はコンプレッサー式のエアコンが装備されています。冷暖房とも高電圧バッテリーを電源として稼働しています。(シートヒーターは12Vバッテリーを使用しています)PTCヒーターはセラミックヒーターのような仕組みですぐに暖かくなりますが電力を多く使用します。ディスプレイの消費電力を見る限りヒーターより冷房のエアコンの方が使用電力は少なそうです。またエアコンを使用するときに室温より高い温度に設定するとヒーターも稼働するので電力量も増えます。

▼エアコンの電力表示

 

 

9.バッテリー
500eの搭載バッテリーは42kWhです。最近の電気自動車に対しては少ない方です。電費は1kWh当たり約7kmなので300kmほど走れます。カタログのWLTCモードで335km。メーターに表示される実績に基づいた予想航続距離は250kmから300kmになります。冬の間はヒーターを多用していたので少なめで、暖かくなってきてからは300kmを超える時も出てきています。充電残り容量に対し充電された電力を計算すると残表示のバッファ容量が約4kW、20km分ぐらいありそうです。
自動車はガソリンや軽油を給油するためにガソリンスタンドに行くのが当たり前でした。電気自動車はその概念を変える大きな転換です。バッテリーにやさしい普通充電は交流200Vの電気を使用します。充電用コンセントを家庭に設置されることが多いかと思います。一般的な家庭に設置しているコンセントでの充電は1時間あたり3kW充電できるので500eの容量に対して0%から100%までは14時間かかることになります。

▼200V3kW(3000W)で充電中

自宅以外で充電する場合には電気スタンドに行って充電することになりますが無人のため料金の支払いのために個人認証が必要になってきます。その認証は「e-Mobility Power」が日本全国ほとんどの充電器をカバーしています。各自動車メーカーでは自社が発行した認証カードを提携することで自社を優遇するサービスを付加し利用してもらっています。フィアットではそのような認証カードが存在しないので一般的な充電カードを契約する必要があります。私は自動車メーカーの縛りがない日産自動車のZEPS3と基本料金の無い「ENEOS ChargePlus」を契約しました。
充電器は買い物の最中に充電できるようスーパーの駐車場に設置しているところもあります。普通充電の3kW〜6kWの充電器では1時間充電して21km〜42km分走れる量を充電できます。費用は数百円程度です。
それに変わって急速充電は直流の高電圧になります。急速充電は30分の限度が基本、費用は分当たりで充電器の能力で充電量が変わってくるため出来るだけ能力の高い充電器選んだ方が得になります。
急速充電はテスラを除く日本で販売しているほとんどの自動車メーカーは日本の充電規格であるCHAdeMO方式に対応しています。フィアットはCHAdeMOに対応しておらず北米主流のコンボ規格のCCS1を採用しているため日本で充電するにはCHAdeMOアダプターが必要になってきます。CHAdeMOからCCS1に変換されるアダプターは今まで市場に流通されていなかったため開発から始まり充電機との接続試験などに時間がかかり納車に遅れること5ヶ月やっと納品されました。(一部使用できない充電設備がある)そのアダプターは大きく重く(約4kg)取り回しが大変です。アダプターはこれから使っていくので別の機会でレポートしたいと思います。

▼コードレスクリーナーのようなアダプター
 

 

 

10.AVAS

フィアット500eには電気自動車なのでAcoustic Vehicle Alerting System(車両接近通報装置)が備わっていて独特なサウンドが鳴ります。この音はカタログでも音を聞くことができます。この音は電源を入れて最初に20キロ出た時に鳴ります。その後は一般的な音が鳴ります。せっかくこだわったサウンドなのでもっと鳴って欲しいですね。

 

 

11.最後に

冬季に雪の中で立ち往生した場合、電気自動車は大丈夫かというニュースが流れていました。FIAT500eでは、暖房をつけると1時間当たり3kW消費し満充電であれば14時間持ちます。この時間を長いと見るか短いと見るかは判断が分かれるところですが、生存するためには工夫が必要です。また、イグニッションキー(電源)をONにすると、デイライトかヘッドライトが必ず点灯してしまいます。夜間に車内で休憩する場合など、ヘッドライトが点灯し続けてしまうため、テスラの「キャンプモード」のような空調のみ使える機能を付けてほしいです。
以上が5ヶ月使って感じたことをまとめた内容です。これからの季節ではエアコンを使ったドライブになってくるので、航続可能距離にどのくらい影響するのか楽しみです。
フィアット500eは、従来の内燃機関の500の楽しみや趣味嗜好的な自動車から、現代の流れに沿った安全機能、自動運転、デジタル化等によって、快適な移動手段に変わってきていると感じます。急速充電アダプターも手に入ったので、これからは遠出のドライブを楽しみたいと思います。

(WEB担当スタッフ)

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