春を過ぎると活躍してくるエアコン。梅雨の時期では除湿、暑くなってくるとフル稼働してくると思います。暑くなって思い起こすと去年の暑かったときは全然冷えてなかったなとなるかも知れません。
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構造
(チンクエチェントの)エアコンの仕組み
簡単に言うと液体を蒸発させてその時の気化熱で冷やします。手についたアルコールが蒸発するとひんやりするのはこの現象によるものです。
冷媒ガス
俗に言うフロンガス。自動車にエアコンが取り付けられるようになった時代はフロンのR-12(CFC-12)、1990年ぐらいから環境問題で代替えフロンのR-134a(HFC-134a)に切り替えられてきました。しかし近年GWP(地球温暖化係数)の観点からEUでは新冷媒使用の義務付けでR-1234yf(HFO-1234yf)に切り替えが始まりました。自動車メーカーで切り替えが進んできておりフィアットは自動車メーカーではいち早く(チンクエチェントではマイナーチェンジ後(2017年)ぐらいから)変更しています。
▼R-134a(HFC-134a)
冷媒ガスは液体から気体と気体から液体と変化して循環しています。
①コンプレッサー→②コンデンサ→③エキスパンションバルブ(高圧側)→④エバポレーター→③エキスパンションバルブ(低圧側)→①コンプレッサーに戻ります。
① コンプレッサー
エンジンで駆動していて冷媒ガスを圧縮しコンデンサに送ります。ガスは圧縮すると液化し高温になります。圧縮方式ではロータリー型やスクロール型などがあります。家庭用エアコンはコンプレッサーの性能が電気代に直結するので高効率型に変わってきています。
▼コンプレッサー
② コンデンサ(サブクール式コンデンサシステム)
コンデンサはラジエーターと同じ構造でボンネット前部に取り付けられていて高温で半液化した冷媒ガスをラジエーターファンで冷やしさらに液化させます。従来はコンデンサの次に接続されているレシーバー/リキッドタンクがありますがチンクエチェントのサブクール式コンデンサはコンデンサの横に一体化された気液分離器が取り付けてあり冷房効率を上げるための過冷却部を設けています。気液分離器内には乾燥剤とフィルタが内蔵されています。
③ エキスパンションバルブ(高圧側)
冷媒管が室内へ入るところに取り付けてあり、高圧側と低圧側の穴が開いています。高圧になった液化ガスをエキスパンションバルブ(高圧側の穴)の狭いところから広いところに送ることで一気に常圧(ガス化)に戻します。このときの気化熱を利用し冷やしています。エキスパンションバルブ内にあるバルブを開閉し高圧(送り)側の液化ガスの流量を調整します。④のエバポレーターから排出される冷媒ガスの温度が高いときにはエバポレーターの送り側のバルブを開き冷媒ガスを多く供給し冷却能力を上げます。開き続けると圧力差が少なくなることで冷却能力が下がります。このバルブの開閉が最適な冷却能力を作ります。このエキスパンションバルブを通過するときに「シュー」や「シュルシュルシュル」などの音がします。この音はチンクエチェントは国産車より音が大きい気がします。
▼エキスパンションバルブ
▼細いパイプは送り(高圧)側 太いパイプは戻り(低圧)側
④ エバポレーター
室内のセンターコンソールにあるヒーターユニットの内部にヒーターコアと並んで取り付けてあります。エキスパンションバルブで一気に常圧した冷媒ガスを効率よく熱を奪うような役割で小型ラジエーターのような形状です。ヒーターコアと重ねて取り付けてありファンで風を送って室内を冷やします(除湿します)エバポレーターは車内の温度差で結露し水滴となって車外へ出します。
▼センターコンソールにあるヒーターユニット
▼ミラーに写ったエバポレーター(意外ときれい)
蛇足ですが、ラジエーターは見覚えがありますが同じ構造で液体や気体を冷やす目的によってコンデンサ、エバポレーター、ヒーターコア、インタークーラー、オイルクーラーなど。いろいろありますね。
③ エキスパンションバルブ(低圧側)
エバポレーターからの戻り側もこのバルブの低圧側の穴を通ります。低圧側にはガスの温度を測る検知部があり高圧側のバルブの開閉を行っています。エキスパンションバルブの低圧側を通過した冷媒ガスは①のコンプレッサーに戻ります
▼エキスパンションバルブの仕組み
冷えない原因
① ガスが無くなっている。又は不足している → 漏れの可能性大
② コンプレッサーの動作不良。又は圧縮不足 → 内部の老化や焼付きやの破損、マグネットクラッチの動作不良等
▼鉄粉が溜まったコンプレッサーの内部
③ エキスパンションバルブの機能不全 → バルブの詰まりや開きすぎや開閉調整部の動作不良
④ コンデンサ / 気液分離器の詰まりや水分の混入 → サビや鉄粉での冷媒の循環不良
涼しい風が少しでも出ている場合は冷媒ガスは完全に無くなっていないので多少なりとも機能はしていると判断できます。
修理
冷えない原因を探るのには圧力ゲージを取り付けコンプレッサーの入力(低圧側)出力(高圧側)の圧力、圧力差を測って特定していきます。圧力は外気温にも左右されるので判断には熟練が必要です。正確なガスの量を入れるには全量を排出し再度入れ直します。スローリークなどわずかな漏れの判断は難しく漏れている場所の特定には紫外線ライトやガス検知器を使って調べていきます。またエアコンシステムの修理は高額になることが多くスローリークでは漏れ止め剤を使用したり補充でごまかし夏を乗り越しざろう得ない場合もあります。
▼エアコン点検作業
▼紫外線ランプで漏れチェック
▼エアコンガスに蛍光剤を混ぜる
臭い対策
室内にあるエバポレーターは結露するためカビの発生源になります。室内の臭いとカビが混ざり異臭を発します。清掃はフィルターを取り外し細いノズルで清掃しますが狭く見えないところの作業になるため汚れの完全除去は難しいです。まずはフィルター交換や脱臭剤で対策することになると思います。
エアコンフィルター
エアコンフィルターの交換は運転席側にあります。フィルターでホコリやゴミを取り除くので定期的に交換したほうが良いでしょう。
▼エアコンフィルター(薄黒いのは活性炭の色)
交換は左ハンドルを基準に作られたのか右ハンドル車の作業性がとにかく悪いです。蓋の前にあるステアリングシャフトやハーネス(電線)がありボルトが外せない、フィルターが出し入れが困難です。
▼フィルターは運転席左奥
▼ボルトの前にあるステアリングシャフト
▼フィルターを跨ぐハーネス類
その他
運転席の足元がだけが濡れているときは排水パイプが外れているかもしれません。
▼排水パイプ
新冷媒ガスのR-1234yfは地球温暖化係数が限りなく小さく地球環境に極めて優しい冷媒になります。若干の微然性を有しているため高圧ガス保安法の対象でリサイクル対象外になります。大気開放可能ですがガスの価格がR-134にくらべ10〜20倍以上(200g一万円以上)になりエアコンガス回収再生機を使っての作業になります。(回収再生機は高額なためまだまだ普及が進んでいません。)
▼キャップに可燃性マークがあるR-1234yf
冷えなくなる原因の多くが冷媒ガスの漏れ。家庭用エアコンに比べたら常に振動している自動車の方が漏れると思います。ガス漏れは接続箇所が多くあるため多岐にわたり見えないガスだけに漏れている箇所を探すのは至難の技です。また修理は高額になります。
(WEB担当スタッフ)