寒くなってくるとデュアロジックの調子が悪くなってきます。
不具合の問い合わせも増えており、走行中に急加速や急減速時にアラーム音とともにギア抜けして走行できなくなってしまう事象が多くなっています。(ギア抜け時の表示は「N」や「5」)
<ギア抜けが起きる時の状況>
気温が低い時で、走り始めてすぐや高速巡行など変速をほとんどしていない時に、
● オートモード(エコモードの場合が多い)の5速で走行中、アクセルを強く踏み込んだ時(キックダウン)。
● 5速で走行中(オート、マニュアル、エコは関係なし)に急減速した時
<走行時ギア抜けした場合の対処方法>(すべてが対処できるわけではない)
① アラームが鳴っていても慌てず、シフトレバーを手前に引く「+」(アラームが鳴った直後は無効)
② ①の操作でもギアが入らない場合はそのまま停車し、一度「N」にしてから再度シフトレバーを「D」にする。
③ ②の操作でもだめな場合はエンジンを一度停止し、メーターパネルが消えるまで待つ。そして、キーをオンにし(セルは回さない)ブレーキを踏みシフトレバーを動かしてみる(N→D→R→D→N等)。エンジンがかかっていない状態でシフトチェンジが出来たら、セルを回しエンジンを始動させる。
車のコンピュータのシャットダウンはすぐには終わりません。エラーは、シャットダウン前に再始動してしまうとリセットができない場合があるので、最低でもメーターパネルが消灯するまで待ってから再始動する必要があります。
<修理>
お預かりしての点検になります。
デュアロジックの不具合の原因は多岐にわたります。故障を直すにはコンピュータ診断から始めますが、コンピュータ診断は異常を発したセンサーや電気部品を示すだけです。そこかから故障原因を推測し修理していきます。時々や今までに数回しか起きない症状では、原因の断定までとても時間のかかる作業です。
グランデプントやパンダ2では、デュアロジックECUのバージョンが低くエラーが起きると自力では復帰できない可能性が高いため、ギア抜け等が起きた場合には早めの点検をお勧めします。
<技術情報>
ガレージドッコのブログで何度も説明していますが再度おさらいをしておきます。
デュアロジックの機構は変速及びクラッチ操作を高圧のオイルで動かしています。
仕組みは、タンクに溜まっているオイルを電動ポンプでデュアロジックのバルブユニットに送ります。油圧経路の途中にはポンプの補助として一時的にオイルの圧力を貯めておくアキュームレーター(蓄圧器)があります。高圧のオイルをソレノイドバルブ(電磁弁)で制御しピストンを動かしています。オイルはシリンダーが戻るときに元のタンクに戻っていきます。
デュアロジックは40bar(約40kg/cm2)~50barの間で正常な動作をしています。ポンプは2、3秒で40barから50barに上げる能力があります。シフト操作は一回で圧力を2~5barぐらい落としてしまいます。シフト操作が多い時はひっきりなしにポンプが回っていることになります。
エンジンキーをオフにすると油圧は徐々に低下し、1~2時間で40bar以下に、一晩で10bar以下になる事もあります。
エンジン始動時にはその油圧を上げておく必要があります。ドライバー側のドアを開けると10秒間ポンプが回り油圧を上げます。キーを回した時には再度ポンプを回し油圧を規定まで上げます。
助手席側から乗り込んだ時など運転席のドアを開けなかったり、ドアを開けてすぐにキーをオンにした直後では油圧が足りない為セルモーターを回しません。(グランデプントの場合はセルを回そうとしてしまいトランスミッションエラーが起きてしまいます。車種によってはオーディオパネルに油圧不足の表示されることもあります)
前置きはこのぐらいにして、
● アキュームレーター内には窒素ガスが封入されており、外気温でガスの圧力が変化しているようです。寒くなると不具合が多くなる原因はアキュームレーターの圧力を貯める能力が落ちている可能性が高いです。アキュームレーターの圧力値が規定を下回っている場合には交換が必要です。
▼アキュームレーター
● ミッションからデュアロジックに飛び散ったオイルが、劣化したオイルシールからメカニカルユニットに侵入してしまい、そのオイルが寒さでメカニカルユニットに障害を与えています。このオイル漏れの場合、漏れたオイルを除去したりカムロックソレノイドを交換したりしても、オイル漏れの原因を直したわけではないためオイルが溜まれば症状は再発します。修理にはメカニカルユニットの交換が必要になってきます。
▼メカニカルユニット
▼コントロールシャフト
油圧バルブユニットでピストンインターフェースエレメントを手前に、奥に、と回転させ、ギアコントロールフィンガーでギアチェンジを行っている。カムドラムは回転せず横にしかスライドしない。1速⇔2速、3速⇔4速時にはシャフトが回転しカムドラムがスライドする。R⇔1速、2速⇔3速、4速⇔5速時にはカムドラムが固定され、カムのレールに沿って今度はシャフトがスライドしシフトの横移動が行われる。したがって3速から5速や2速から4速など1つ飛ばしての変速はしていない。(ここが重要)
▼裏返しにしたメカニカルユニット
トランスミッションのシフトフォークを操作するギアコントロールフィンガー
ギアコントロールフィンガーはトランスミッションに載っているため、常にミッションオイルが降りかかっている。
▼劣化するオイルシール
このオイルシールは交換できない訳ではないが、作業時間や分解時に与える影響を考えるとメカニカルユニットを交換した方が良い。
▼ミッションオイルがドラムケースに溜まってしまう
ドラムケースに溜まったオイルの影響で5速から3速に急減速するような俊敏な変速時にギア抜けが起きてしまうと考えられる。
ガレージドッコでは考えられる状況について模擬試験を行っている。
▼センサーのオイル中での抵抗値の変動試験
▼センサーの常温時と冷間時の抵抗値の変動試験
▼冷凍庫内での冷間試験
以上の情報はガレージドッコが独自に検証した結果であり公式な見解ではありません。
また、名称は正式名では無くガレージドッコがわかりやすく変更したところがあります。
業者からの問い合わせが多くなっております。この情報はガレージドッコが検証した独自の結果であり、修理情報ではないためご返答できない事をご理解ください。
(技術担当スタッフ)